一条戻り橋〜晴明神社

京都の魔所‥‥そう聞いて、一番に、この一条戻り橋を思い浮かべる人は多いはずである。
安倍晴明の式神、渡辺綱の鬼退治、数々の伝説に彩られ、今も花嫁はけして渡らないと言われる、一条戻り橋。
どれほどまがまがしい気に満ちた場所か、と夢(?)を見ている方には申し訳ないが、これが現在の戻り橋である。
真新しいコンクリートとアスファルトの橋。考えてみればあたりまえだが、この橋も、この周辺に暮らす 人々にとっては、生活道路の一部なのである。「一条戻り橋」というバス停もある。
夢が破れてしまった‥‥と思っている方へ。
これほどの伝説をもつ橋をも、「生活」の「一部」として取り込んでしまう、京都人の心情にこそ、 恐怖しないか?
もちろん、周辺に暮らす人々は、この橋の伝説を、しっかり脳裏に刻んでいる。
何故なら、真新しい橋の真下部分、晴明の式神の眠る辺りは、古びた石垣がそのまま残されているのだ。
又、古い橋の一部は、晴明神社の鳥居の下に、まるで供えるように置かれているのだ。
橋の魔封じを、安倍晴明に託すかのように。

さて、その晴明神社である。
今さら説明する必要もないほど有名な、平安京随一の陰陽師安倍晴明の屋敷跡と言われるこの神社は、堀川の川岸、一条戻り橋のすぐ北にある。
なるほど、ここに住んでいたのなら、戻り橋は近すぎもせず、遠くもなし、式神を置いておくにはちょうどよい場所だっただろう。
尤も式神にとって距離にどれほどの意味があるとも思わないが。
境内はさして他の神社と変わった所があるわけではなく、さほど広くない敷地と、壮麗だが華美でなく、印象としてはこじんまりとした感がある。それが、よけいに、「生きている」神社、の雰囲気を高めている。
この日も、新生児を抱いたご夫婦がお参りに来ていた。そうか、この子は晴明神社の氏子なのか、と、少し羨ましく思ってしまった。
さして他の神社と変わりはない、と言ったが、この神社には、一つ大きな特徴がある。
五芒星。安倍晴明印紋である。星の形を一筆書きにしたこの印は、陰陽道の魔除け、魔封じの印である。
この五芒星が、至る所に、そう、絵馬にも、お守りにも使われている。
平安以来、この神社は、京都の魔を封じ続けてきたのだろうか‥‥